ひとつ前へ。自分たちの形を、そっとはじめます。
これまで森安は、OEMを中心に多くのブランドのものづくりを支えてきました。
その積み重ねを大切にしながら、今、職人としての「自分たちの表現」にほんの少しだけ踏み出そうとしています。
派手な宣言ではなく、手元の仕事の延長線上にある、ごく自然な流れとして。
いま取りかかっているのは、素材の扱い方をもう一段深く探る試み。
皮のような質感や、かすかな光沢を帯びたウール。
この素材が見せる“思いがけない表情”を、もう少し確かめたくなりました。
長年の経験で積み重ねてきた“微妙な温度と距離”の感覚を頼りに、少し触れては確かめ、また離れてみる。その繰り返しの中で、ウールとは思えない輪郭や奥行きが、少しずつ立ち上がってきています。

ただ、特定の形や意味に縛られているわけではありません。新しいことに向かう途中でふと見える景色──その一つひとつを丁寧に拾っているような段階です。
昔の布の表情にもヒントをもらいながら、
「軽いのに芯がある」「一枚の素材から立ち上がる」
そんな質感を探し続けています。
まだ完成ではなく、まだ手探りの途中。
けれど、森安の手仕事が次のステージへ進むための
小さな一歩として、ここにそっと残しておきます。
そのうち、ひょっこりと形になって現れるかもしれません。
気長に見守っていただけたら嬉しいです。